ー世田谷怪談ー
 
Part2「カラス」




それは、

異常な暑さの続いたこの初夏の、ある昼下がりの事であった。
いつものように、シャンディと近くを散歩していると


カァ〜、カァ〜

と頭上から異常に甲高い十数羽のカラスの鳴き声が・・・

子育ての時期らしく、その泣き声はこちらに恐怖さえ感じさせる。

「近頃はカラスが異常に増えたし、ちょっと怖いなぁ。」
などと思いながら歩いていると

あるマンションの前の道路が、おびただしい量のフンで異常に汚れていた。

何なのかな〜・・・と思いつつ、歩いていると
顔見知りである、そのマンションの管理人に会った。


話はこうであった。



〜管理人の話〜


先日、事務室にいるとね

突然、玄関の方で
バァ〜ンという物凄い音がしたので
出て行ってみると

何と
カラスが血まみれで倒れていたんですよ。

どうやら
そのカラスは、玄関が中庭とガラスのドアで繋がっているのに気がつかず、
通り抜けようとしたらしい。


死んでいるようにも見えたけれども、

とりあえず、そのままにもできないので
気持が悪かったが片付ける事にしたんですよ。

それで

道路前の空き地に仕方なく、カラスを放り投げた。

すると、奥さん

ものの30分もしない内に、ガァガァと外がやかましいので
出て行ってみると

何と!

数百羽のカラスがその倒れたカラスを取り囲むように
電線といわず、空き地といわず集まってきていたんですよ。



奥さん、ホントにこの辺りが真っ黒になりましたよ。


今まであれほどの数のカラスは見たことがありませんよ。
もう、びっくりしたなんてもんじゃありませんよ。

、怖かったですよ〜。
いや〜、本当に怖かった!

それでね
出ていった私を、みんなで威嚇してきたんですよ。


どうやら

私がカラスを捨てたところを見ていたのがいたらしい。

もう、恐ろしいので
急いで中に戻って、様子をみていたんですよ。


すると

しばらくするとそのカラスがね、
フッ、と立ち上がったんですよ。

そして、ヨロヨロっと 2、3歩歩いたかと思うと

「カァ〜、カァ〜」

って鳴いたんです。

するとね、奥さん、

その大量のカラスたちが、じょじょに帰って行ったんですよ。

まぁ、たぶん「大丈夫だ。」とでも言ったんでしょうかねー。


それでもね

疑い深いカラスもいたらしく、しばらくこちらをみているのもいましたよ。

それからね〜。
そのカラスも、どっかへ飛んでいったんですけどね、


とにかく、死んでなくて本当に助かりましたよ。

これで死んでいたら、わたしに復讐にくるんじゃないか。
って、本気で心配したくらいですよ。


まぁ、それからもね、

こうして、まだ何十羽も電線に止まって私の様子を見にきてるんですよ。


カラスってホントに頭がいいというか
伝達能力もすごいですね。

ようやく今は数も減ってきましたけど
何より、このフンですよ。


いくら道路とは言っても、うちのマンションの玄関前ですからね〜。
片付けない訳にもいきませんしね。


いやぁ〜、カラスってのは本当に怖いってことが
よ〜く分かりましたよ。


といいながら、竹ぼうきでフンを片付けつつ、
カラスを棒で追い払っている管理人でありました・・・。