世田谷怪談
ーその1ー
近所に、ある、とても小柄で優しーい感じのお婆さんが住んでおりました。
いつも、シャンディと会う度に
「可愛いワンちゃんですねー。うちも前に犬飼ってたんですけど、もう何年か前に、突然亡くなっちゃいましてねー。」
とか
「私は40歳を過ぎた息子と二人暮しなんですよー。
でも、息子はいつも仕事で家にいないもんですから、昼間はひとりぽっちなんですよー。
奥さん、良かったら、いつでもワンちゃんと一緒に遊びに来て下さいなー。」
と、それはそれは寂しそうにおっしゃいます。
あまり何度も言われるので、つい「じゃあ、一度・・・。」
なんて思いかけた、ある夏の暑ーい夕方の事でした。
いつものようにシャンディと近所を散歩していますと、向こうから件のお婆さんがトコトコやってきます。
でも、なんとなく様子がおかしい・・・。
あたりをキョロキョロと眺めては、ある家の庭の前を行ったり来たりしています。
丁度、シャンディと電信柱の裏に入ったので、何気なくお婆さんを見ていました。
すると、そのおばあさん、何を思ったのか、
突然!
その家の庭に咲いていた、それは、そこの家の人が丹精込めて、やっと咲いたであろう
たった2、3輪の白い花を、
いきなり、引きちぎろうとしているではありませんか。
ところが、このお花、なにやら枝ものの花だったようで、
非力なお婆さんの手では
そう簡単に折れるものではありません。
そりゃーもう、必死でした。
あとは・・・枝との格闘ですわ・・・。
いや・・・はや・・・
その時、ふと・・こちらを、振り向いた!。
その、その、形相ときたら、まぁ、まさに鬼婆でした。
きゃ〜〜〜〜!
ああ、怖い!
ねっ?怖い話でしょう?
えっ?全然怖くない?ナニ?その上、怪談なんて、今頃季節はずれだ?
あっ、そう・・・。
じゃ、次回はもっと怖〜い話をするぞ〜〜〜。
あれ?ちょっとー、貴方の後ろに誰かいますよ!
出たーーー!
南無阿弥陀仏〜〜〜っ!