Short Shorts15


ホームレス〜普通の人々〜




それは2年前の
「クリスマス」の2日前の事だったの・・・。


その日も朝から冷たい雨が降り続いていて

いつものように

シャンディを高速下の公園にお散歩に連れて行ったのだけど・・・。





丁度シャンディが立っている辺りを
数年前からここに住み着いている
5人のホームレスの中の一人のおじさんが

長い箒を持って一生懸命にお掃除していたの。

そしてシャンディを見ると
「おいで〜。」

って言ったの。

シャンディは大喜びでそのおじさんの前に行ったので
自然とそのおじさんと話をする事になったの。



「いつもおじさんがここをお掃除しているの?」

「そうだよ。一日に何回か掃除しいてるんだけど
運動にもなるし、綺麗になって気持ちいいしさ〜。」

「そうだったの。
おじさん、田舎は何処?」

「オレはね、名古屋から出てきたんだよ。
工場に勤めていたんだけど
会社が潰れちゃってさ・・・。

今更名古屋に帰っても仕事も無いし
それでも何年か前までは結構日雇いの仕事が有ってさ

アパートに住んでいたんだけど
今は殆ど仕事も無くなっちゃってね〜。

それでもさ、失業保険とか少しは有るから
食うだけは何とかなってるのさ。」

と、ちょっと寂しく笑ったんだけど
前歯が抜けてたな〜・・・。


「そうなの・・・」

「おじさん、これから寒くなるけど
毛布とかセーターとか
何か必要な物は無い?」

「いや、別に何も無いな〜、有難う。
ここにいると、
結構皆が着る物だの毛布だの持って来てくれるんだよ。
だから沢山有るからいいよ。
何もいらないよ。」

「そう?
でも遠慮なく、何か必要な物が有ったら言ってね。」

それから
おじさんはちょっと考えて

「そうかい?
それなら毛糸の靴下が欲しいな〜・・・。
足が冷たくて良く眠れない時が有ってさ・・・」


「分った。じゃあ今度来る時に持って来て上げるね。」

と言って別れたのだけど

こんな事を言っては失礼だけど
まさか「何も要らない」
って言われるとは思わなかったの。

何だかちょっと感動したな〜。





家に帰ってすぐに主人にその話をすると

「分った、明日すぐに買ってくる。」

と言って
翌日、何と15足もの靴下を買って来たんだよ〜。

「こんなに沢山、どうするの?」

と聞くと

「だってあそこには5人のホームレスの人がいるでしょ。
一人3足ずつで15足でいいんじゃない?。
それに、明日はクリスマスだし
夜中にそっと届けに行こうよ。」

「あ・・・それいいね。そうしよう!」





こうして又しても
シャンパパはサンタさんになったので有りました。

この時はサンタのコスチュームは無かったけどね〜。

シャンディと三人で真夜中に
暖かそうな厚手の靴下3足ずつを入れた赤い袋にリボンを付けて

「メリークリスマス! サンタより」
と書いたカードをテープで貼って
それぞれの住処の入り口に置いて来たんだよ〜。







それが去年の春頃の事・・・

5人が住んでいた下の写真の左側の方には
それぞれが廃材で立てた住処が有ったのだけれど

それがいつの間にか全部撤去されていたの。





聞くところに寄ると
全員「強制退去」させられたのだとか・・・。

何処かの収容施設に入れられたのだと言う。


こうして暫くはホームレスが誰もいない公園になったの。

あの廃材の家が無くなって
綺麗になったと言えば言えるんだけど
それでも
あのおじさんと話をしてからは
何だかちょっと寂しかったんだよね・・・。

それまでは私も
何となく「ホームレス」の人たちの事は怖かったし
夜は一人でシャンディを散歩に連れて行くのはイヤだったんだけど

話をしてみると
ホントにごく普通の人たちなんだよね。

それに良く見ると
いつもそれぞれの住処としている所は
皆ちゃんと綺麗に片付けて住んでいたんだよ。

時々洗濯物も干してあったりね〜。

中にはいつも難しい顔をして本を読んでいるおじさんもいたんだよ〜。


   


それが・・・。

今年の春頃に1人、2人・・・と帰ってきたの。

以前と同じおじさんが2人
そして
全然知らないおじさんが一人、又住み着くようになったの。


でも、以前のように
廃材で住処を作る訳にも行かなくなったのか
こうしてベンチに座っていたり

夜になると寝袋の中で寝ているの。





そして
彼の左側の花壇は

最初の頃にはちゃんと区がお花を植えて綺麗にして有ったのが
バブル崩壊後には
区が花を植え替える事は一切無く

すっかり荒れ放題になっていたんだけど

いつの頃からか
彼が花壇をきちんと耕して

お花を植えるようになったの。


   


何でも、たまに有る仕事先で
いらなくなった花を貰って来て植えているんだって・・・。


「田舎のおふくろが花が好きでさ・・・
オレが子供の頃
いつも庭には花が一杯咲いていたんだよ。
だからオレも花が好きでさ。
こうして貰って来ては育ててるんだよ。」





って寂しげに言ってたけど
きっとお花を見ては実家やおふくろさんを
懐かしく思っているんだね。

お盆もクリスマスも実家に帰らなかったようだから
きっと色々事情が有るんだね。


そう言えば
こんな事も有ったんだよ。


ついこの間の事なんだけど
いつもはきれいにお掃除されているのに

通路に2箇所も汚い犬のウンチが落ちてたの。


それでいつものおじさんが
今ではすっかりお友達みたいになっちゃって
シャンディが側に行く度に話をするようになっているので


「おじさん、今日初めてここに犬のウンチが
2箇所にも落ちていたんだけど、
いつもはおじさんが片付けていたの?」

って聞いたら

「あ・・アレ?あれはオレ!」
と自分を指差してニッと笑ったの。

「えっ?どういう事?」

「いや~、オレも犬は好きだけど
結構マナーの悪い人が多くてさ・・・。
いつもはオレが片付けているんだけど
今日は頭に来たから“見せしめ”だよ。」



いつも皆はホームレスの人たちを
蔑んで見ているけれど
逆にマナーを教えられてしまったね。





そして先日・・・
ホントにビックリする事が有ったの。


昔、私が銀座の会社で仕事をしていた頃

それは10年以上前の事なんだけど

「銀座」でも取り分け目立つホームレスのおじさんがいたんだけど

なんと、
そのおじさんがここに来たのよ〜。


昔は真っ黒だった伸び放題の汚れて
まるで「わかめ」みたいになってしまったような髪も
すっかり白髪まじりになってしまっていたけど

特有のズボンを2枚重ねて履いても
尚、股の所が半分出ているあの姿・・・。

絶対に見間違いようが無いものね。

でもね
とに角汚いんだけど
何故か
どことなく「キリスト様」のような雰囲気が有るの。

私なんて
ひょっとして実は彼はキリスト様の仮の姿で
この世を行脚して回っているんじゃないか・・・

なんてマジで思ったりしたんだけど

それにしてもあれから10年以上・・・。
キリスト様だったら
こんなに東京にばかり居続ける筈ないものね〜。





そのおじさん・・・
10年以上前の事なんだけど
何と
銀座で地下鉄に乗ってきたのよ、私のちょっと後ろから・・・。

私の前がまるで
「モーゼの前で紅海が割れた」みたいに
人がサァ〜っと引いて行くじゃないの〜。

「一体・・な・・・なんなの~?」

と思ったら、私の少し後ろに
このホームレスのおじさんがいて、電車に乗り込んできてたの。

この車両・・・あっという間にだ〜れもいなくなっちゃったんだよ〜。
夕方のラッシュアワーの時間だったんだけどね。

でもね
私は動けなかった。
あまりに可哀想で・・・。


それにしても・・・あの臭さは半端じゃ無かった〜〜〜!!!
(≧∇≦)

そのおじさんが10年以上経って
殆ど同じ服装、いでたちでここを歩いていたんだよ。
ホントにビックリしたけど

とにかく、まだ生きていて良かった・・・。





そして数ヶ月前に・・・。

テレビで「厳寒のホームレス」
というドキュメンリーを見たの。

その人は東京でごく普通のサラリーマンをしてたんだって。

それが
やっぱりバブルの崩壊で会社がつぶれ
家族とも縁が無くなって
一人で「ゴミの日」にまだ食べられる食料を見つけて
食べて暮らしているんだけど

駅の待合室に毎日いるらしいのだけど
真夜中に待合室が閉鎖になると
始発の時間まで数時間
凍える雪の中をずっと歩き続けるんだって・・・。

マイナス何十度という厳寒の旭川では
歩き続けていないと死んでしまうんだって・・・。

街ですれ違っても、ごく普通の人にしか見えないこの人も
何処かで人生の歯車が狂ってしまったんだね。






今年は大きな台風や地震が有って

沢山の人が今も「避難所」生活をしていたりするけど

私達だって、何時なんどき
こんな災難に合わないとも限らないし

本当にごく普通に暮らしていても
人生、いつどんな事が起こるか分らないんだよね。

ホームレスの人たちだって
まさか自分がこんな事になるなんて
きっと思ってもいなかったと思うの。

だから
ホームレスの人たちを蔑んだり、
特別の目で見たりしてはいけないんだよね。





今年ももうすぐクリスマス・・・。

シャンパパサンタさんは
「今年も靴下でいいかな~・・・」

って、昨日もプレゼントを考えていたんだよ。


いつの日か
このホームレスの人たちも
楽しい我家でクリスマスをお祝い出来る日が来るといいね。