ー女ってヘンなところでケチ?ー
 「その1」


「貴方たちはヘンなところでケチだねー。」
車の中で夫が笑いながら言った。


その日は主人の誕生日であった。

20年来の友人夫婦と4人で
横浜のホテル内にあるレストランで
「フランス料理」を食べての帰りの車の中での事である。


    

    

    
(これは、「シェ・松尾」でのフルコースランチです)


夕方6時半頃から始まったフルコースディナーは
とても美味しく、楽しい会話ですっかり盛り上がった。
支払いを済ませ、何気にフト時計を見ると11時5分前であった。

「あっ、あと5分で11時だわ。急がなくちゃ・・・。」
私の声で、皆小走りに駐車場へと急いだ。

ホテル内の駐車場までは徒歩で5分ほどかかる。

この駐車場は料金が30分で300円である。
レストランを利用しても、全く料金サービスがない為
こうして、いつもゆっくり4時間ほどかけて食事をとると
駐車料金だけで2400円もかかってしまうのだ。

それが、何と既に4時間半を過ぎ、5時間近くになろうとしているではないか・・・。
11時を過ぎると3000円になってしまう勘定だ。

それで、全員が私につられ大急ぎで走リ出した訳である。

何とか間に合い、2700円ですんだ。

車の中で女二人が大喜びで言った。
「良かったねー、間に合って。300円セーブしたよ! ヤッタねー。」
「うん、危なかったねー。」

ドイツ人である友達のご主人が笑いながら言った。

「でも、ゆっくり美味しいものを食べ、優雅な気分で出てきたのに
どうして、最後に300円の為に走らなければならないの。
300円位、いいじゃない。」

ここで言った夫の言葉が冒頭の言葉である。

「あなたたちは、ヘンなところでケチねー。」

皆で大笑いした。

でも、確かに女にはそういう所がある。
日頃の無駄遣いは、とりあえず棚に上げて・・・ね。(^_-)




ついでに言えば

こんな時、日頃はジーンズしかはかない私もドレスアップなどする。
その時
清水の舞台から飛び降りたつもりで買った
左足に金の鎖のようなアンクレットが模様になっている
1500円位のストッキングを履いたりもする。

ある時
そのストッキングを注意深く引き上げたつもりが
その日は急いでいて、
あろうことか、思わずパンティのところで指を突っ込んでしまったのだ。
この時の悔しさ!
殿方には絶対にわからないであろう・・・。

近頃のストッキングは強い。
めったなことでは伝染などしない。

指を突っ込んだのではお終いである。

1週間、いや、1ヶ月は悔しくて眠れなかったわ。

それでも履いて行ったけどね・・・。



「ヘンな所でケチな話 ーその2ー」


先日、ある友人と映画を見るために新宿へ行った。

新宿駅を出て、劇場へ向かって歩いてほどなく、
突然、彼女が言った。

「ねぇ、失礼しちゃうと思わない?」

「えっ、何がー?」

「あら、あなた気付かなかった?
今、そこ通った時、ポケットティッシュ配ってたじゃない。
私の前までは全員に配ってたのよー。
だから私も手を出したのに、
私には、わざわざ手を引っ込めて渡さなかったのよー。
もう!随分だと思わないー?

ねっ、ほらっ・・・見て見て! 又みんなに配ってるでしょ。」

と振り返りながら、尚も言う。

なるほど、言われてみれば確かにそのようである。





「そうねー。でも、ティッシュなら上げましょうか。」

花粉症の季節である。てっきりティシュが入用かと思ったのだが・・・


「そうじゃないのよ。皆に渡して、私にだけ渡さないってのが頭にくるじゃないのよー。」

と、かなり憤慨の面持ちだ。

たかがティッシュ一つでそれ程怒ることもなかろう、とも思ったのだが
そうではないと言う。
みんなに配っていたものが、たとえ何であれ
自分にだけは渡さなかったのが腹立たしいのだそうだ。

まぁ、確かにそれも有るだろう。

だが、しかし


いつぞや彼女が言った言葉をしっかり覚えているぞ。

「町で配っているポケットティッシュ、あれって助かるのよねー。
でも、うちの娘たちは絶対にもらわないのよー。
ヘンな広告ばかりで、恥ずかしくて人前で使えない・・・っていうのよ。
いいじゃないねー。
広告なんてなんだってー。
私なんて、ポケットティッシュなど、殆ど買ったことないわー。」

やっぱりティッシュだ。

もし、これがただのビラ一枚だったら、彼女だって絶対に怒りはすまい。

いや、むしろ
手すら出さなかったに違いない。





その時、ふと思い出した。
似たような話が何年か前にもあったことを・・・。





ある晩、別の友人から電話があった。

「ねぇ、聞いてくれるー?
今日ね、すっごくショックだったのよー。
実はね、今日一人で銀座に買物に行ったの。

そしたらね
「三越デパート」の前で、何かティシュのような物を配ってたの。
それがね、皆に配ってたのに
私が前を通ったら、さっと手を引っ込めたのよー。

何か気になって、引き返してもう一度通ってみたの。
そしたら、やっぱり私の時だけ手を引っ込めるじゃない。
何だか、すごくあったまに来て
帰りにもう一度そこを通って、何を配ってるのか確かめたのよー。

何だったと思う〜?

「新発売の生○用ナプキン」だったのよー。
失礼だと思わない?もうー、ショックよー。悔しいったらないわー。

だってさー

もしよ、仮に、私には必要ない、って配ってる子が思ったにしてもよ、
ああもう、腹が立つー

もしかしたら、私に娘がいるかも知れないじゃないのー。
そこまでよくよく考えて配った方が効果があると思わない?」
怒り心頭に発している。

なるほど、確かにそうかも知れない。

だがしかし、もしそうであれば
たとえ80歳過ぎのお婆さんにだって、女の孫やひ孫がいるかも知れないではないか。



すると彼女らは
人が通りかかった時に
瞬時にそれを判断せねばならない事になる。

ティシュ配りにも瞬発力、加えて予知能力が必要となってくる訳だ。
誰でもなれるものではない・・・。


しかし、自分には配られなかったものが
何であるかを、二度も引き返して調べ上げた彼女も
中々のものである。


たかが粗品、されど粗品である。

やはり夫が言うように

「女はヘンなところでケチ」なのかも知れない・・・ね!