Short Shorts 6






「動物たちのレクリエム」
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先日、図書館で一冊の本が目についた。
辛そうな内容と分かったが、借りずにはいられなかった。
表紙の犬の目が、どうしても私を捉えて離さなかったのだ。

心無い飼い主に捨てられ、殺傷処分される犬猫の数、
一日1800匹・・・・。
辛い現実である。


「この子たちの幸せを祈って」

ーその2ー

友達夫婦は可愛いヨークシャーテリアを飼っていた。
名前は「リク」ちゃんという。

数年前、ご主人がある地方都市に転勤になった。
暫くの間、仮のマンション住まいとなった。
二度目に主人と遊びに行った時、
リクちゃんの他に、ひどく痩せて毛が殆どない子猫が飼われていた。

その子は
二人が奥さんの実家に帰省した時、車庫で見つけた捨て猫だったのだという。

生まれて間もないその子猫は
雌で体中ノミに食われ、栄養失調で
病気にもかかっていたらしく、車の下で殆ど死にかけていたという。

放っておく訳にもいかずに、二人はすぐに動物病院に連れて行った。
何日か入院したが、奇跡的に命を取り留めたという。
そして
この家の子となった。

「ソラ」と名づけられた。

その後、彼らはその地方都市が気に入り
丁度売り出された、素晴らしい別荘地の一角を買い、
注文建築の素敵な家を新築した。

そこは、まだ売り出されたばかりで、
家が建ったのはまだ2軒目だということであった。

ほどなく、その新築の家に遊びに行った。
すると、


(「どうぶつたちへのレクリエム」より)


今度は庭に初めて見る大型犬がいた。
立派な犬舎がそばにあった。

その犬は
ある日、別荘地を見廻っていたそこの管理人が
殆ど死にかけているこの犬を見つけ、「何とか助けて頂けないか」
と頼みに来たのだという。

その別荘地も又、捨て犬が後を絶たず
管理人も困り果てているという。

そして

最初に住居として住み始めた60代のご夫婦は
ほんの数ヶ月の間に
すでに4匹の捨て犬を引き取って飼っており
これ以上お願いするのは忍びないのでお願いに来たと言った。

二人は取敢えず様子を見に行くことにした。

その犬は見るも無残な有様で、その姿を見て
奥さんは泣きだしてしまったという。

取敢えず、病院に連れて行く事にした。

獣医は言った。

「この子は、重いフェラリアに罹っていて助かる見込みも少ないし
長期の入院になり、費用も莫大になるが・・・」
と。

それでも
二人は見殺しには出来なかった・・・。

1ヶ月以上入院し
その治療費は100万円以上になったという。

この二人とて、特別裕福だった訳ではない。
大変な負担のはずである。
すごいことだと思った。

そして

この子も奇跡的に命を取り留めた。

その後の獣医の話では

年齢は推定1才半位
非常に珍しい雄のイギリス産のハンター犬で
買えば、おそらく100万円位はするだろう・・・と。

フェラリアに罹ったので、捨てられたのか、
あるいは
何日も迷い歩いている内にフェラリアに罹ったのかは分からないが
ただ、このように若く高価な犬がいなくなれば
探しに来るのが普通だと思うのだが、
管理人も誰も、そのような話は聞いたこともないので、
おそらく、捨てられたのだろう。と。

その子は
性格もおとなしく、とてもいい子だった。

飼い主が見つかるまで預かるつもりであったが
ついに現れることもなかった・・・。

そして

この子は「海輝」と名づけられ、友人夫婦の長男として大切に飼われることになった。





二人は、このハンター犬には充分な運動が必要と
朝はご主人が、夕方には奥さんが、
毎日、かかさず1時間ずつの散歩をさせた。

そんなある日
ご主人が竹ぼうきで庭を掃除しようとした。

それを見た「海輝」は、ブルブルと震え、
両手で頭を隠すようなしぐさをしたという。

「きっと、いつもこんな棒のようなものでなぐられていたんだね。
可哀想に・・・」
とご主人は言った。


今「海輝」は、優しい二人の長男として幸せに暮らしている。

そして

あのときの子猫も
素晴らしい猫に成長していた。


まるでヒマラヤンのような毛並みに変わっていた。

雑種ではあるかも知れないが
確かにヒマラヤンの血が入っているようにも見える。

どちらも、未だに少し気が小さいが
元気で優しい子になっていた。

そして


どちらも、間違いなくしっかりと幸せをつかんだ。





本当に良かったと思う。


御主人は言った。

「こんないい子たちを捨てるなんて人間じゃないよね。
それに
もし、自分の犬が迷子になったのなら、わたしなら何日、何ヶ月かかっても
絶対に探し出すよ。
当たり前じゃない。家族なんだから・・・」


辛い現実の中に、ちょっとだけ明るい光が見えた気がした・・・。